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植物の病害抵抗性機構の研究(2015)


特許「トバモウイルス抵抗性遺伝子及びその利用
」が登録されました。
トウガラシ属トバモウイルス抵抗性遺伝子L

「植物の自己防衛能力」の利用

 植物の持つ病害抵抗性機構を理解することにより,人為的に植物の防御応答を制御する新たな低環境負荷型農業技術の具体的なアイデアを提案することが可能となります。当分野では,岩手県内で栽培が盛んなピーマンなどトウガラシ属植物が示すトバモウイルス抵抗性をモデル実験系に用いて,植物における病害抵抗性の分子機構の解明,並びに,ウイルス病害を防除する新技術の確立を目指しています。
 
 【抵抗性遺伝子の単離】
植物の持つウイルス抵抗性遺伝子を単離・同定することで,遺伝子の機能解析を行います。
トウガラシ属のトバモウイルス抵抗性遺伝子群L1, L1a, L1c, L2, L2b, L3, L4をポジショナルクローニングにより単離しました(Tomita et al, 2008, 2011)。さらに,L 遺伝子と同様にトバモウイルスの外被タンパク質を認識するタバコのN' 遺伝子を,L 遺伝子ファミリーの保存領域を用いたHomology-based cloningにより単離しました
(Sekine et al. 2012)。

トウガラシ属トバモウイルス抵抗性遺伝子L
タバコ属トバモウイルス抵抗性遺伝子
N'

 【抵抗性遺伝子のウイルス認識機構】
  L 抵抗性遺伝子ファミリーのコードするタンパク質が,いかにトバモウイルスを特異的に認識して,どのようなシグナル伝達機構を活性化して過敏感反応抵抗性を誘導するのかは明らかになっていません。特に抵抗性を規定する抵抗性タンパク質,ウイルスの外被タンパク質の相互作用を中心に,その作用機序を明らかにする ため,遺伝学的/逆遺伝学的な解析や,生化学的手法を用いた研究に取り組んでいます。

形質転換手法が整備されている等の利点から,トウガラシ属植物と同じナス科植物であるタバコを主な実験材料として
研究を進めています

2013年1月発刊の「バイオサイエンスとインダストリー」に解説が掲載されました。
「植物ウイルス抵抗性タンパク質による病原体認識の特異性決定機構」著:関根健太郎・小林括平
実験用のタバコ(温室にて育生)
【トバモウイルス抵抗性タンパク質による病原体認識の特異性決定機構】
 抵抗性遺伝子L及びN'はCC-NB-LRRというドメイン構造を持つ典型的な抵抗性タンパク質をコードしている。Lタンパク質群間でドメインを入れ替えたキメラタンパク質を作り,トバモウイルスの認識特異性を解析したところ,LRRドメインのC末側2/3の領域の配列で認識特異性が決定することを示しました(Tomita et al., 2011)。また,LとN'の間でも同様にドメインスワップの実験によりLRRドメインのC末側2/3の領域の配列で認識特異性が決定することを示しました(Sekine et al., 2012)。

ー関連研究ー
   平成23年度 公益財団法人山崎香辛料振興財団 研究助成
   「ペッパーマイルドモットルウイルスによるトウガラシ属植物の抵抗性打破機構の解析

   研究成果普及計画書あり → 公益財団法人山崎香辛料振興財団ホームページ




【抵抗性シグナル伝達機構】
ウイルスの認識後に,どのようなシグナル伝達系を介してウイルス抵抗性となるのか,特にウイルスの増殖を抑制する実働的なメカニズムを明らかにすることを目指しています。


【参考】
Tomita, R., Murai, J., Miura, Y., Ishihara, H., Liu, S., Kubotera, Y., Honda, A., Hatta, R., Kuroda, T., Hamada, H. Sakamoto, M., Munemura, I. Nunomura, O., Ishikawa, K. Genda, Y., Kawasaki, S., Suzuki, K., Meksem, K. and Kobayashi K. 2008
Fine mapping and DNA fiber FISH analysis locates the tobamovirus resistance gene L3 of Capsicum chinense in a 400-kb region of R-like genes cluster embedded in highly repetitive sequences.Theoretical Applied Genetics 117:1107-1118


Tomita, R., Sekine, K.-T., Mizumoto, H., Sakamoto, M., Murai, J., Kiba, A., Hikichi, Y., Suzuki, K., and Kobayashi, K. 2011
Genetic basis for the hierarchical interaction between tobamoviruses and allelic L resistance genes from different pepper species.
Molecular Plant-Microbe Interactions 24:108-117


Sekine, K.-T. , Tomita, R., Takeuchi, S., Atsumi, G., Saitoh, H., Mizumoto, H., Kiba, A., Yamaoka, N., Nishiguchi, M., Hikichi, Y., and Kobayashi, K. 2012
Functional differentiation in the LRR domains of closely related plant virus resistance proteins that recognize common Avr proteins.
Molecular Plant-Microbe Interactions
25:1219-1229

林括平・山岡直人・西口正通・関根健太郎 トウガラシ属植物のトバモウイルス抵抗性遺伝子L の単離と機能解析.2011 植物防疫 65:239-243

関根健太郎・小林括平 植物ウイルス抵抗性タンパク質による病原体認識の特異性決定機構.2013 バイオサイエンスとインダストリー 71:23-26

Kobayashi, K., Sekine, K.-T., Nishiguchi, M. Breakdown of plant virus resistance: can we predict and extend durability of virus resistance? Journal of General Plant Pathology 80:327-336. (Review for the 100th anniversary)
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